産地紹介(ビネガーおよびスパイス)
PDOシェリービネガー (ビナグレ・デ・ヘレス- Vinagre de Jerez)
へレス・ケレス・シェリーおよびマンサニージャ・サンルカール・デ・バラメーダという原産地呼称地域で生育したぶどうから作ったワインを酢酸発酵させた結果として得られる調味料です。
試食メモ
強く豊かなワインのような風味が持続します。元のワインをありありと思い起こさせる強力ながら快い酢の香りに加えて、かすかにナッツの香り、ワインが浸み込んだ木材やスパイスの香りが感じられます。 見た目は濃くてなめらかな質感です。色は琥珀色からマホガニー色まで様々です。
その他のメモ
丁寧に加工した後、法令では、体積で3%のアルコール分の残留を認めており、最小固形分は酸度1度につき1.3 g/lとなっています。このシェリービネガーに必要な最小限の酸性度は 1リットル当たり70 g (体積の7%)です。
生産/加工方法
ビネガーは、アルコール添加ワインからでも、未熟成のアルコール無添加ワインからでも作ることができます。前者の場合、使用するワインは通常、なんらかの理由で熟成中に酢酸度が高くなったシェリーです。未熟成ワインの場合は、通常、酢酸菌の働きを促進し、迅速な酢酸発酵手順が展開されるようにします。どちらの場合も、ビネガーはその特徴をクリアデラ・ソレラ法に従ったシェリーワインと同じ方法で行われる熟成から得ています。 アニャダスと呼ばれるもうひとつの伝統的なプロセスでは、ビネガーを動かさずにそのまま熟成させます。
シェリービネガーは通常、事前にシェリーに浸したアメリカンオークで作られた500リットルの樽で熟成させます。ただし、PDOの規定では、オークもしくは栗の木から作られた容器の使用も1,000リットルまで認められています。
クリアデラ・ソレラ法は、熟成前のビネガーがより長期間の熟成を経た他のビネガーと入念に混ぜ合わされ、数年後には徐々に必要な特徴を獲得していくというダイナミックなプロセスです。
ビネガーの樽は3レベルか4レベルにランク分けした年数順に配置(「スケール」といいます)します。最下段のスケールは地面に最も近くてソレラと呼ばれ、最も長く熟成されたビネガーが入っています。ひとつ上のスケールは第一クリアデラと呼ばれ、それよりもやや若いビネガーが入っています。第二クリアデラにはさらに若いビネガーが入っていて、以下、最後のクリアデラまで同様です。
準備ができたら、ビネガーは一番下の樽から少しだけ抜き取ります。取り出した分量は、第一クリアデラの樽からの同量のビネガーで補充されます。次に、第一クリアデラから取り出された分のビネガーは、第二クリアデラから補充され、以下同様に、最も若いビネガーがある最上段まで続きます。
最後の段階はカベセオと呼ばれ、ここでビネガーをブレンドします。ビナグレ・デ・ヘレスとして分類される最終産品を得るためには、必ずしもすべてが同じ方法で熟成されている必要はありません。
地理/地形と気候
かつて、へレスのブドウ栽培者は生産地域をパゴス(地所)に分割していました。同じような土壌と中気候を持つ、地形的特徴によって限定された小さなブドウ園です。生産地域の中には白っぽい土壌の地所から成るへレス・スペリオールという伝統的に知られる区域があります。また別に、沈泥状および砂状の土壌の土地から成るソナと呼ばれる区域もあります。
マルコ・デ・へレスとして知られるシェリー生産地域では、アルバリサと呼ばれる独特な白い土壌を特徴とする土地が、ゆるやかな起伏で広がっています。これはシェリーやシェリービネガーを作るために用いられるブドウを栽培するのに理想的な土壌です。アルバリサの岩は、漸新世中に地域全体にあった内海の水が沈積したことにより形成された白い有機泥灰土で、炭酸カルシウム、粘土、ケイ土を豊富に含んでいます。
このアルバリサ土壌は、水分を保ち、冬の降雨を貯めて乾燥する時期に地下茎を養う能力が高いのです。マルコにある他の粘土と砂から成る土壌も、ワインやビネガーの生産に利用されますが、アルバリサほど多くはありません。
この地域の気候は暖かい南部のもので、大西洋の影響を強く受けます。西風が海から湿度を運んでブドウに朝露を作ることで、酷暑や熱い西風に耐えます。成長期の平均気温は17.5ºCです。1年間で300日近くは快晴で、陽射しと明るい光が降り注ぎます。
平均年間雨量は600 l/m2で、ほぼ10月から5月の間に降って土壌に水分を貯め、乾燥する夏期にこの水分が使われます。9月は通常、乾燥していてブドウの健全な成熟を助けます。
PDOコンダド・デ・ウエルバ ビネガー (Vinagre del Condado de Huelva)
PDOに登録されたブドウ園で栽培され、統制委員会に登録されたワイナリーで作られ、熟成され、貯蔵されて同委員会の認証を受けたワインを酢酸発酵させた結果として得られる調味料です。
試食メモ
ソレラ: それほど濃くない琥珀色で、マホガニー色に反射します。鼻孔には、風味を高めるために用いたコンダード・ビエホのアルコール添加ワインに由来する3%の残留アルコールから生じるナッツを思わせる酸っぱい香りが感じられます。味覚では、オロローソシェリーを思い起こさせる、コクがあってバランスのとれたワインのような風味が感じられます。
レセルバ:濃いマホガニー色で琥珀色の反射があります。鼻孔に感じる刺激的な香味は、強く迫る酸味、よく熟成したコンダード・デ・ウエルバワインの香気、かすかなバニラ、乾燥イチジク、レーズンの香りを伴います。味覚は、辛口でピリッとする風味が感じられ、コンダード・ビエホワインを思い起こさせる後味が長く続きます。
アニャーダ:濃いマホガニー色でつややかです。強い酸味を感じる香気があり、 よく熟成したオロローソシェリーの香気と、熟成の際に入れられていたオークの香りを伴っています。風味はコクがあり、辛口で鋭く、豊かにバランスがとれています。後味は強くて長く続き、コンダード・ビエホワインに由来する残留アルコールから生じるナッツとスパイスの香りもあります。
生産/加工方法
生産プロセスには次のような段階があります。
天然の熟成度が10度以上の健康なブドウを収穫します。ブドウを破砕し圧搾することによりマスト(果汁)を得ます。PDOの規定では、このプロセスは、現代の技術を使いながらですが、伝統的な方法に従う必要があります。搾汁量は、収穫したブドウ100kgごとにマストまたはワイン70リットルまで、または未熟成白ワインの場合であれば60リットルまででなければなりません。
発酵用マストの準備 ビネガー生産のため、PDO地域で今日用いられている技術のひとつは、現代の技術を要する高速発酵または深部発酵であり、標準的な製品が保証されます。その他、自然に酸化したワインも使用できます。
酢酸発酵後、ビネガーは主に、へレスで標準的に行われる伝統的なクリアデラ・ソレラ法 を使って熟成します。これは、最も若いビネガーが 他の熟成したビネガーと入念に混ぜられていき、数年後には必要な特徴を得るというダイナミックなプロセスです。
ビネガーの樽は3レベルか4レベルにランク分けした年数順に配置(「スケール」といいます)します。最下段のスケールは地面に最も近くてソレラと呼ばれ、最も長く熟成されたビネガーが入っています。ひとつ上のスケールは第一クリアデラと呼ばれ、それよりもやや若いビネガーが入っています。第二クリアデラにはさらに若いビネガーが入っていて、以下、最後のクリアデラまで同様です。
準備ができたら、ビネガーは一番下の樽から少しだけ抜き取ります。取り出した分量は、第一クリアデラの樽からの同量のビネガーで補充されます。次に、第一クリアデラから取り出された分のビネガーは、第二クリアデラから補充され、以下同様に、最も若いビネガーがある最上段まで続きます。
これが、へレスで「スケール移動」として知られるものです。使用される道具は特別なもので、樽のビネガーはできる限り少量だけ移動し、それにより、フロー(酵母の層)が乱れないようにします。
一部のビネガーでは、アニャダスと呼ばれるもう一つの伝統的な方法が用いられます。この方法では熟成プロセスを通じて、ビネガーは同じ容器内に入れたままで動かしません。
地理/地形と気候
ブドウ園はブドウ栽培に最適の、平坦でやや広がりのある、起伏のある土地に置かれています。土壌は一般に中性もしくはやや塩基性で、ローム質であり、平均的に肥沃です。コンダード・デ・ウエルバの気候はブドウにとって理想的です。すなわち、冬から春は穏やかで、夏は長くて暑く、大西洋の影響が顕著に見られます。この地域の平均年間気温は18ºCで、相対湿度は60%から80%の間で変動します。
PDOラマンチャ サフラン (Azafrán de La Mancha)
指定生産地域産のサフランの花(Crocus sativus L.)の雌しべ柱頭と花柱を乾燥したものから作った香辛料です。
試食メモ
暖かく快い印象の香味が強くて刺激的であり、熟した穀物またはかすかに花の匂いが感じられる乾いた草のやや芳しい香りを伴います。抽出すると、嗅覚・味覚は豊かでなめらかな印象を受け、最初はやや苦く感じられる風味が、熟した穀物と暖かな感覚へと変化して、これがしばらく続きます。渋みの無いのが特徴です。
その他のメモ
物理的・化学的特性は以下の通りです。
- 水分および揮発性物質: 11% m/m (容器に入っていないサフランで7-9 %)未満
- 全灰分: 8% m/m
- 酸不溶性灰分: 1% m/m未満
- エーテル抽出物: 3.5-14.5 % m/m
- 冷水可溶性抽出物:65% m/m未満
- 着色力: 容器入りのサフラン、容器に入っていないサフラン、いずれも200超(440 nm乾燥重量に対する吸収力を直接測定)
- 着香力: 容器入りのサフラン、容器に入っていないサフラン、いずれでも20超(330 nm乾燥重量に対する吸収力を直接測定)
- 苦味(ピクロクロシン): 容器入りのサフラン、容器に入っていないサフラン、いずれについても70超 (257 nm乾燥重量に対する吸収力を直接測定)
- サフラナール含有量:容器入りのサフラン、容器に入っていないサフラン、いずれについても 65%超(揮発分の総含有量に対する割合)
生産/加工方法
サフラン(Crocus sativus L.)は、アヤメ科に属しています。その丸い球茎(直径2~3センチメートル)は、肉厚で茶色がかった灰色の網状の膜に覆われています。10月から11月に、各球茎から1個から3個の管型の芽が、長く薄い葉と共に伸びてきます。花はライラック色から濃い紫色へと移りゆき、その内部がわかるところまで開きます。この花には、黄色い雄しべ3本と白い花糸が育つ子房があります。後者は、サフランスレッドとなる3本の赤い柱頭に分割する花柱です。
ラ・マンチャのサフランの花は、他の生産地で栽培されているものとは外観が異なります。赤い柱頭が花から突き出していて、花柱が長いからです。柱頭と花柱の長さの比率は、許容差1%で1を超えていなければなりません。柱頭の長さは22㎜未満でもよく、これも許容差は1%です。花廃棄分は重量で0.5%以下です。これは、柱頭から切り離された花柱、雄しべ、花粉および花弁および子房の一部分を意味します。
異物の許容度は最大 0.1%で、これはサフランの花とは無関係の植物の残留物、すなわち、無機物(砂、土、埃)および虫の死骸もしくは虫の一部等であると考えられています。かびや生きた虫が入っていてはいけません。
サフランは3年周期で同じ土壌で栽培されます。その後で、過去5年間にサフラン、食用ビーツ、またはアルファルファの栽培に使われていなかった別の区画に移動します。球茎は伝統的には6月の後半から9月の前半までの間に植えます。
花が咲き始めたら、花が開いていてしおれないうちに摘み取る必要があります。摘み取り期間は、栽培期間中の気候条件にもよりますが、通常、10月から11月までのおよそ30日間、続きます。
花を摘む際、柱頭がぐらつかないようにするには、卓越した技能と正確さが必要です。収穫した花は、つぶれたり、過熱したりしないように丁寧に扱い、柱頭の分離を行う場所に移します。ここでは花を粗布やキャンバス地の上に、または硬い地面に薄く広げて並べます。
柱頭の分離は、摘み取りから12時間以内に行わなければなりません。柱頭は、花柱が白くなり始めるあたりで花柱と一緒に切り取ります。次にこれを金属や絹布でできた目の細かいうらごし器の中に厚さ1.5㎝の層になるように並べて十分に温めます。
サフランは熱した炭や、一定で均一な熱を与えると同時に余計な風味や匂いをつけてしまうことのない適切な間接熱源の上で、20分から45分温められます。温めたサフランは、次に、計量の上、湿気や光から守るため、清潔で新しい食品用の容器に詰められ、発送まで清潔で涼しく乾燥した貯蔵室で保管します。
梱包は手作業でもまたは自動装置でも行うことができ、容器は最大100g入りとすることができます。封入システムは、製品の維持を保証しなければならず、また、容器は、清潔で乾燥した換気の良い施設に、温度25℃以下で保管しなければなりません。
ラ・マンチャのサフランには、高い着色力があります。これは、統制委員会が発行した番号を振ったバックラベルで識別することができます。このサフランは、時間が経つと品質が劣化するため、収穫した年のうちに販売しなければなりません。また、これは糸状(スレッド)の形でのみ販売しなければならず、挽いて粉にすることは決してありません。スレッドはしなやかで強く、柱頭は明るい赤色です。
地理/地形と気候
栽培地域はカスティーリャ・ラ・マンチャの中央部から南東にまで広がっています。作物として、サフランはこの地域の気候に非常に適しています。平均的な高度は海抜約700mであり、土壌は一般に石灰質で、粘土状から砂状の質感です。
気候は大陸的地中海性気候で、おおむね暖かく日照に恵まれており、夏は暑くて乾燥していますが、冬は寒冷で温度が著しく変化します(最高温度は38Cºから 42ºC、最低温度は 6ºCから -12ºC)。降水量は乏しく、これが収穫高を限定する主要な要因です。
PDOピメントン・デ・ラ・ベラ (Pimentón de la Vera)
Capsicum annum およびCapsicum annum longum種に属す、オカレス、ハランダ、ハリサおよび ヘロミンの各群の各種の亜種およびボラ亜種の赤い果実を完全に 破砕することで得られる製品です。果実は生産地域内で栽培し、成熟し、健全かつ清潔であり、この亜種の特徴的な色を示し、害虫や病気がない状態で摘み取ります。その後、伝統的なラ・ベラの方法で、トキワガシやオークの木の焚火の上でこれを乾燥させます。
試食メモ
この製品は強烈で刺激的な風味があり、乾燥プロセスにより煙の残り香があります。色は明るく、いくぶん艶のある赤色です。この製品には着色力があります。風味、香味および色は、おもに時間をかけた穏やかな乾燥プロセスが用いられたことにより、時間が経っても安定しています。
その他のメモ
破砕後の粒径はASTMふるいサイズ16とします。ピメントンの粉に食用のサンフラワーオイルを添加して、粘度とつやを出すことがありますが、最大でも乾燥物の3%までとします。最終産品は、認められる亜種由来のもの以外の種子、胎座、ガク、茎や、人工的な着色料、またはこのスパイスの特性を改変するその他の物質がまったくないものでなければなりません。
物理的・化学的特性は以下の通りです。
- 最大含有水分:14%
- 乾燥物質のエーテル抽出物:最大23%
- 乾燥物質の未処理繊維:最大28%
- 乾燥物質の灰分:合計(最大)9%
- 不溶性物質:最大1%
- 色 (ASTAユニット): 最小 90%
生産/加工方法
生産は2月下旬から4月上旬にかけての苗床の準備から始まります。苗は5月15日から6月10日ごろまでの間に畑に移植します。土壌はまず耕します。
植付けは手作業で、または移植機を使って行います。その後、畑によく水を与えて、根付くようにします。果実が熟したら、手作業で摘果し、農場の乾燥室へ運び、ここで下に置いた焚火から立ち上る煙を使って乾燥させます。その結果、ゆっくりとした穏やかな乾燥プロセスとなり、10日から15日後には果実の水分が80%から15%未満にまで落ちます。乾燥後、製品には燻した風味と香味が付き、色が非常に安定します。
このあとエメリー(金剛砂)石臼を使って破砕します。破砕後のピメントンは、次に水平ミルにかけられます。ここには、規定で定めている最大比率まで、植物油を加えることができます。最後に、製品を包装してラベルを付けます。
地理/地形と気候
局地的な微気候で土壌特性および水質により、こうした亜種の栽培が可能になります。その果実はピメントン特有の風味があり、乾燥プロセスを経て完成されます。じめじめした気候のため、日光の下での乾燥が行えず、燻蒸が必要になります。これが、ピメントンに特徴的な風味と香味を与え、同時にその色を非常に安定させます。